数学とは何か?

7. 証明の方法

先の「4. 論理思考とは何か?」で仮定法という証明の方法を紹介した。
これは

[仮定法]

ある仮定が正しくないことを証明するのに

 ある仮定が正しいとするとそこから論理的に導き出される結論が
最初の定義と矛盾することを示すことによって
最初に正しいとした仮定が誤りであることを
示す方法である。

定義から論理的に証明される定理は定義と同じように論理的に
等価であるので定理に矛盾することを示してもよい。

[演繹法]

…が成り立つので ….も成り立つ。というように
次から次へと論理的に証明を進めていく方法を演繹法(えんえきほう)という。

一般に数学の証明は演繹法として公開されることが多い。
しかしこれは読み手に理解させるための手法であって
証明した人間はこれとは逆の思考で考えている。

結論を導くために結論が成り立つとするとその前の
…が成り立つはずであり …が成り立つとすると
その前の….が成り立つことが必要であるが
これは条件として与えられているので従って
結論も正しいという思考回路である。
証明するために思考は結論から遡って考えたはずなのに
人に説明するときはウォーターフォールのように
上流から下流へ説明していく。
読み手は一体なぜそんなことを思いついたのかわからない。
わかりないはずである。
思考回路とは逆の順序で説明しているからである。
 この演繹法を使った証明が数学をわからなくしている。

 典型的な例は中学の図形問題でいきなり補助線を引いて
説明する手法である。
聞き手はなぜいきなりそこに補助線を引く発想がでたのか
理解できない。
この補助線を引いてという中学の数学は論理思考を
育てるはずの数学ではなく当てもののクイズである。

これでは中学生は数学を好きにはなれない。

ほとんどの証明問題の解答は演繹法で書かれている。
先にも説明したように読み手の学生はなぜこの証明を
考えついたのか理解できない。
解答を読んでも学習にはならない。

[帰納法]

これは高校で習う証明方法で

(1) N=1のとき成り立つ
(2) Nのときに成り立つと仮定すると N+1 のときにも成り立つ

(1)+(2)によってすべての N について成り立つ

という証明方法で印象的でもあるので覚えている人も
多いだろう。