ネットワーク

89. Power VS パス・スルーの障害と解決方法

今回の記事は複数台のPowerSystemを保有していて
クラウドでもう一台のPowerSystemを追加するユーザーにとって
大変重要な話である。
  
 
Power VS を使って初めて判明したのだが
VLS で仮想的に社内として結合している
Power VSに対してパス・スルー(STRPASTHR)を
行うと簡単にフリーズしてしまうことが
判明した。
パス・スルーは成功するのだが何かコマンドを入力すると
そこでフリーズして強制キャンセルすると
次はパス・スルーしても二度と繋がらないという障害が
発生した。
 
 
さらにフリーズしたジョブを簡単にキャンセルしたのでは
二度とパス・スルー(STRPASTHR)接続できなくなってしまうという
問題まで発覚した。
この重要は問題の解決方法を紹介する。

■ パス・スルーでフリーズしたジョブのキャンセル方法

STRPASTHRでフリーズしてしまったジョブをWRKACTJOBの「4=終了」で
終了してしまうと受け側のPower VSをIPLしない限り二度と
パス・スルー接続はできなくなってしまう。

これを正しくキャンセルさせるには

WRKAPPNSTS + [実行] で「2. RTP 接続の処理」を
選択して

                               RTP 接続の処理                                  
                                                          システム :   Sxxxxxx 
 オプションを入力して,実行キーを押してください。                               
   5= セッションの処理   8=APPN ロケーションの処理   9= パス・スイッチ          
   10= 接続の終了        12= 構成状況の処理 ...                                 
                                                                                
                                                                                
                      --RTP パートナー ---                                      
                                  rョnンーh                ナーベヌ       ネョニュ]       
 OPT     制御装置      制御点     ID          TCID      h[ヌ          数         
        R688C74X                                                                
                      R688C74X    APPN        000030    #CONNECT    2           
        VER76                                                                   
 10                   VER76       APPN        000060    #CONNECT    1 

ここで「10=接続の終了」を選択するとまもなく STRPASTHRを実行して
フリーブしていたジョブも強制終了される。

■ Power VS にパス・スルーでフリーズする原因

Power VSにパス・スルー接続してフリーズする原因は
APPC (=SNA:すなわちパス・スルー)の最大伝送サイズが 1461バイトであるのに対して
IBM Cloud(のVPN)のMTU(=最大伝送単位 Maximum Transmission Unit)は1216バイトである。
つまり パス・スルーは1461バイトを一度に転送しようとしているのに対して
Power VSのクラウド伝送は 1216バイト(=データ部分は1208バイト)しか送れないので
伝送が途中で詰まってしまうということである。

パス・スルーが伝送したい長さ1461バイト > PVSの伝送長 1216バイト

したがってこの障害はPower VSだけでなくクラウドでIBM iを接続したときに
同じように発生する障害である。
Power VSだけに起こる障害ではない。
弊社では社内にVer3.7, Ver5.4, Ver6.1, Ver7.1, Ver7.5 の5台のPowerSystemがありさらに埼玉のデータ・センターに Ver7.3/7.4 の一台のPowerSystemつまり
合計6台のPowerSystemを保有していて今回のPowerSystemが7台目となる。
 
 

■ 解決方法

APPCの最大伝送はサイズを 小さくして 1208バイトに変更すればよい。

CHGCTLAPPC CTLD(VER76) MAXFRAME(1208)     (OS Ver7.1)
CHGCTLAPPC CTLD(S0667E36) MAXFRAME(1208)  (OS Ver7.6)

(両方のIBM iで同じようにMAXFRAMEを変更する)

おわかり頂けたであろうか?
これは実際に Power VSを使って運用してみないとわからない問題であり
この障害の解決方法も簡単には見つからなかったので紹介した。

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